見た目はとてもモダンなS邸ですが、実はそこかしこに『日本の伝統的民家の優れた特性』を応用した設計がなされています。 気密性や断熱性を過剰に追求する流れとは一線を画し、『日本の気候風土に根差した先人の知恵』をアレンジし、現代の工法と材料で作り上げた家です。
この家は、日本の伝統的民家にみられる「遮熱」「調湿」「通風」「蓄熱」「放射熱」の優れた温熱特性に注目し設計をしました。
お施主様の主な要望は次の通りでした。
① 屋上にセルフビルドでサボテンの温室を作りたい(夫)
② 1階のブックカフェは無柱空間にしたい(妻)
③エアコンの風が苦手(妻)
④無垢の木を使いたい(夫)
⑤子ども世代に代替わりした時も柔軟に対応できる。
これら要望を読み解くうち、シンプルでミニマムなRC造フレームの中に、上記温熱特性を纏ったフレキシビリティーの高い木造ユニットを容れることを着想しました。①②をRC造フレームで、③④⑤を木造ユニットで応えています。 新しい試みにチャレンジした他にない難しい建物を、守屋さん、各職人さん達には大変に興味を持って楽しんで仕事に励んで造り上げて頂き、本当に感しております。
長野 智雄(設計士)
設計士の長野さんには、一階に妻のブックカフェ、屋上に私のサボテン栽培場、二人が住む自宅は2階…といった3つの大変な要望を、デザインの意匠も加味して設計にまとめていただきました。 また、守屋さんには、多くの職人さんがかかわるたくさんの工程をまとめていただき、本当にご苦労様でした。いつでも現場で私たちの要望に施工上の解決策を対応していただきました。台風の時は、足場が風で飛ばない様、夜を徹して現場に張り付いていたことを後でお聞きし、並々ならぬご努力で完成にこぎつけていただきました。設計上、屋上の下に屋根を作り風通しをよくする、防水コンクリート、蓄熱性の良い断熱材の使用、ラジエターによる冷暖房、その他幾つかのアイディアを盛り込んでいますが、それを現実のものとして施工していただき、本当にありがとうございました。妻ともども感謝いたします。
(S様)